Patrick's Parabox - 無限入口 (1)
最近は Patrick's Parabox というパズルをよく遊んでいます。
このゲームはカスタムレベル作成に対応しているので、色々作って公開しています。 ぜひあそんでみてね
さて、わたしが作ったカスタムワールドのひとつに、無限入口 ε に関するレベルを 100 問集めた Infinitesimal というワールドがあります。 Infinitesimal では、本編では深く取り上げられていなかった無限入口にまつわる仕様が多数登場するのですが、この記事ではそういった仕様も全部ひっくるめた、無限入口の完全解説 を試みます。
1 種類の部屋からなる無限入口
最も基本的なところからはじめましょう。 このゲームでは、同じ部屋に無限に入り続けてしまうケースが発生します。
以上の画像において、左側は本体の中にクローンが、右側はクローンの中に本体が入っています。 これらの部屋の構造を図にすると、以下のようになります。
MS ペイント感たっぷりの画像で失礼します。 [ ] は本体、( ) はクローンを表しています。
本体から出ている実線の矢印は、その部屋の行き先を表します。 つまり、その本体に入ると、直ちに矢印の先の部屋に入ることになります。
また、クローンから出ている点線の矢印は、その本体にあたる部屋を表します。 つまり、そのクローンに入るということは、矢印の先の部屋に入るのと同じことになります。
以上の図において、いずれの場合も矢印がループ状になっているので、このような部屋に入ったが最後、プレイヤーは永遠に部屋に入り続け、いつまで経っても終着点にたどり着くことはできません。 こういった場合に 無限入口 が発動して、プレイヤーは無限に入ることになる部屋の ε 部屋 へと飛ばされます。
この図はこんな感じに読んでください:
- 左側:
- ▷ [ ] 緑の本体に入ると、
- [ ] → ( ) その中の緑のクローンに入る、
- ( ) → [ ] すなわち緑の本体に入ることになる。
- [ ] → [ε] 以上を繰り返すことで無限入口が発動して、緑の ε に飛ぶ。
- 右側:
- ▷ ( ) 青のクローンに入ると、
- ( ) → [ ] すなわち青の本体に入ることになり、
- [ ] → [ ] その中の青の本体に入る。
- [ ] → [ε] 以上を繰り返すことで無限入口が発動して、青の ε に飛ぶ。
無限入口の判定
ところで、無限入口が発動する、すなわちある部屋に無限に入り続けてしまうかどうかを、このゲームはどうやって判定しているのでしょうか。 「無限に部屋に入り続ける」ことを本当に文字通りの意味で判定することはできません。それには無限の時間がかかるからです。
この仕様を確かめることのできる、面白い実験があります。
以上の画像のように、再帰する部屋と十分グリッドが細かい部屋を隣接させて、色々な位置から再帰する部屋に進入することを考えます。 一見、どの位置から入ったとしても、単に緑の部屋に入るだけで、緑の ε 部屋に飛ぶことはないように思えます。
しかしながら、その予想は裏切られます。
以上の画像において、上側の区間の位置から入ったときは、予想の通り緑の部屋に入るだけです。 一方、下側の区間の位置から入ったときは、なんと緑の ε 部屋に飛びます。
このことから、このゲームにおける無限入口発動の判定条件は、「同じ部屋への進入が 3 回 繰り返されること」であると推測できます。 *1
2 種類以上の部屋からなる無限入口
ここからは、複数種類の部屋が絡んだ無限入口を取り扱います。
ケース 1
青い部屋の中に緑の本体、その中に緑のクローンがある構造です。
青い部屋はループに含まれていないので、無限入口には特に関わってきません。 この場合、「1 種類の部屋からなる無限入口」の項で扱ったものと同じことが起きて、プレイヤーは最終的に緑の ε に飛びます。
ケース 2
緑の本体の中に青い部屋、その中に緑のクローンがある構造です。
この場合もケース 1 と同様、プレイヤーは最終的に緑の ε に飛びます。 しかし、ケース 1 とは異なり、青い部屋もループに含まれていますが、なぜ青の ε には飛ばず、緑の ε に飛ぶことになるのでしょうか?
その答えは、先ほど説明した無限入口の判定条件「同じ部屋に 3 回入ること」にあります。 プレイヤーの動きを順に追ってみましょう。
- プレイヤーは最初、緑の本体に入り(1 回目)、
- その中の青い部屋に入り(1 回目)、
- その中の緑のクローン、すなわち緑の本体に入り(2 回目)、
- その中の青い部屋に入り(2 回目)、
- その中の緑のクローン、すなわち緑の本体に入り(3 回目)、
- 緑の無限入口が発動して、緑の ε に飛ぶ。
おわかりいただけましたでしょうか。プレイヤーが はじめに緑の部屋に入った のがポイントで、そのため青よりも先に緑の部屋に 3 回入ることになるのです。 ゆえに、青の無限入口よりも先に緑の無限入口が発動して、緑の ε が行き先となるわけです。
ケース 3(Challenge 30)
以上の仕様を組み込んだステージが、本編の Challenge 30 および 31 です。 「2 種類の部屋が相互再帰しているところに入ると、最初に入ったほうの色の ε に飛ぶ」という現象は、こうして説明がつきます。
このあたりで、いったん記事を区切ろうかと思います。 まだ ”ε の ε” はおろか "ダブル ε" の説明にすらたどり着いておらず、無限入口のほんの入口を説明したにすぎませんが、今回の内容は以降でもしっかり使うことになります。 ぜひ 3 回は読んで、この記事の ε に到達してください
*1:追記:いま見返してみると、「同じ箱(本体とクローンも区別して考える)への進入が 2 回繰り返されること」と考えてもこれはこれで辻褄が合いますね。気が向いたら検証します