パズルゲームを作りました。不思議な魔法の帽子🎩を使って倉庫番系パズルをします。
『Magician's Hat』がテーマの 48 時間ゲームジャム Thinky Puzzle Game Jam 2 参加作品です。
開発中の様子はすでに記事にしてあるので、ここではシステム面ではなくパズル面の解説をしていきます。
※がっつりネタバレを含みます、まだパズルを解いてない方はぜひ先に解いておいてください!!
section 1
ゲームのタイトルにもなっているメイン要素、魔法の帽子 の基本的な挙動を紹介しています。
1-1
初期状態ではプレイヤーが見えませんが、左右を押すと帽子が左右に動き、上を押すと帽子からひょっこり出てきます。
プレイヤーがプレイヤーの形をしたマーク(以下「ゴール」と呼ぶ)に乗ると光るので、あとは帽子を四角いマーク(以下「ターゲット」と呼ぶ)に乗せればよさそうに思えますが、床にくっついた帽子を拾い上げるという操作は従来の倉庫番システムでは不可能ですね。これを達成するまでに、以下が学べるかと思います。
- 素直に帽子の側面の位置に移動しようとすると、帽子のつばを上から押して 引っ掛かる形になって、その位置まで下がれない。
- そのため、帽子の中に入って帽子を横に動かす ことで、帽子の横に 2 マスのスペースを確保する。
- そして、帽子の側面に立って上に移動すると、帽子のつばを下から押して 帽子を持ち上げることができる。
ちなみに、部屋の四隅がへこんでいるのは単にデザイン的な理由だけではなく、後述する帽子のつばが折れる現象が起こらないようにするためでもあります。つばが折れると帽子を持ち上げられなくなってしまうので、その詰みを起こさないようにする意図です。
1-2
1-1 と同様、帽子を持ち上げる問題です。 帽子を壁にぶつけたときの挙動を理解してもらうべく作りました。
- 帽子を右の壁(切れ込み入り)にぶつけると、壁の切れ込みにつばが刺さる。この状態だと、帽子を上に動かすことはできない。
- 帽子を左の壁(切れ込みなし)にぶつけると、壁にぶつかったつばが折れる。この状態だと、帽子を上に動かすことができる。
狭い隙間に帽子を通すためには、左右両方のつばを折ってから、帽子の底面を押して持ち上げていくことが要求されます。
1-3
帽子の基本的な挙動は説明し終えた(というのは嘘で、帽子の中に入った状態で下に帽子を押し下げることはできないことはここで初めて知ることになりそうですね)ので、ここからは理解度確認も兼ねた、チュートリアルではない通常パズルのターンです。
「帽子のつばをいつ折るか、あるいは折らないか?」がポイントですね。 帽子を(上から)2 段目から 3 段目に下ろすときに右のつばが必要ですが、帽子をターゲットに置いた後ゴールする際には右のつばが邪魔になるので、3 段目で折っておかなければいけません。そうなると 3 段目から 4 段目に下りるときに左のつばを使いたいので、ここまで大事に取っておく必要がありました。
1-4
最後はちょっとした引っ掛け問題です。 *1
ターゲットに帽子を置くには右のつばが必要ですが、素直に帽子を運ぶと右のつばは折れてしまうようになっています。幅 2 マスの縦の通路を通るにはどちらかのつばを折っておく必要があるので、スタートすぐ左の壁で左のつばを折るのが正解です。
section 2
帽子の扱いにも慣れてきたところで、ブロック が登場します。
2-1
ブロックです。押せます。 ターゲットが 2 つに増えたので、ターゲットには帽子だけでなくブロックを乗せてもよいことがわかります。
2-2
ターゲットを満たすだけならブロックを押し下げればよいですが、そうするとゴールが埋まってしまうので、邪魔なブロックと帽子の位置をなんとかして入れ替える必要があります。 その過程で帽子が右端の壁の右上角に押しやられてしまいますが、左のつばと帽子の内部を使えば回収できるのが面白い点ですね。
2-3
ここからは、帽子とブロックの相互作用にフォーカスしていきます。
最後ゴールするために右のつばを折っておきたいのですが、部屋の右側の壁にはすべて切れ込みが入っています。よって、代わりにブロックの左側面を使わせる問題です。
2-4
どんどん行きましょう。 ターゲットに乗せられるのは帽子だけですが、帽子は初動で左のつばが折れ、また帽子をターゲットの上側に持っていく際に右のつばも折れてしまい、それ以上押し下げることができなくなるように思えます。 しかし、幅 1 マスのプレイヤーではなく幅 2 マスのブロックを用いれば、帽子に入ってしまうことなくつばのない帽子を押し下げられるというトリックがあります。
2-5
セクション 2 の最後を飾るのは、みんな大好きエレベーター面です。でもこのエレベーターは外れません。ごめんね
上の壁に張り付いたブロックを帽子によって押し下げる という頻出テクニックがここで初登場します。 上がりきったエレベーターの左上の部分と天井の間に帽子の右のつばを差し込み、そのまま左のつばを押し下げれば、エレベーターの外にいながらエレベーターを降ろすことができるわけですね。
section 3
帽子とブロックの相互作用はまだまだこんなものでは終わりません。 ここからは、ブロックを帽子に入れる アクションを通じて、帽子の内部に関する性質への理解を深めてもらいます。
3-1
ゴールの位置を考えると、ターゲットに置けるのは帽子だけです。ターゲットの 4 マス左に置かれた帽子に入って、ターゲットの位置まで移動したのち帽子から出る、という最終形が見えますね。 しかし、帽子の移動経路にブロックがあって邪魔ですし、このブロックを押し下げてどかすこともできません。 というところで、ブロックを帽子に入れられないか?とひらめき、帽子をブロックに下から押し付けてブロックを「食べる」という操作に至ってほしいです。 でも今思うと、ブロックを帽子に入れる最初のステージとしてはいきなり変化球を投げてしまってるかもしれないな~~
このゲームの帽子がなぜ「魔法の帽子」と呼ばれているのかが、この辺りから見えはじめてきます。 帽子にブロックを入れた後にプレイヤーが入ることができる、すなわち 帽子内部の深さが 2 マス以上ある ことがここではっきりと告げられます。空間がおかしなことになっていますね。
3-2
構造は 3-1 と同じで、最後帽子に入って移動する際に邪魔となるブロックをあらかじめ帽子で食べておくステージです。 さっきと違うのは邪魔なブロックが 2 つに増えていることですが、魔法の帽子にかかれば 2 ブロックを入れた後にプレイヤーが入ることもできます。つまり、帽子内部の深さが 3 マス以上ある ことがわかります。
ちなみに、2 つ並んだブロックを食べる工程も自明ではなく、右のつばを折って左のブロックを食べ、左のつばを押し下げて右のつばを折ったのち右のブロックも食べる、というちょっとしたひねりが存在します。
3-3
やたらブロックが多いのは、帽子内部の深さは 3 マスである、すなわち帽子に入るオブジェクトは 3 つまでであることを伝えたかったためです。 素直に解こうとすると、帽子を単に下のターゲットの位置に置いて、そこに上からブロックを押し込む形になると思いますが、上のブロックは合計 5 マス押し込まないといけないので、2 マス足りなくなります。
3-4
セクション 3 のラストにふさわしい、テクニックたっぷりのステージです。
ゴールから逆算して考えると、最終的には横長のブロックに左のつばを引っ掛けて押し下げたいですね。 しかし、幅 2 マスの縦の通路を通るために、右のつばを折っておかなければならず、そうなると帽子を押し下げる力を与えることができません。 ここで活躍するのが 3 つのブロックです。深さ 3 マスの帽子をブロックでいっぱいにすれば、帽子本体を上から押せるようになる ことが推測できます。
ただ、3 つのブロックをすべて帽子に入れること自体も簡単ではありません。特に一番下のブロックを拾い上げるのに、下の壁に張り付いたブロックを帽子によって押し上げる というもうひとつの頻出テクニックが要求されます。 このステージでは、帽子の右のつばをブロックの下に差し込み、左のつばを押し上げるという形で、ブロックを 1 マス浮かせることができます。 その後のブロックや帽子の取り回しも単純ではなく、総合的にかなりよくできたステージだと思っています。
section 4
前セクションの内容を発展させて、1 マスではない 大きなブロックを帽子に入れる とどうなるかを見ていきます。
4-1
帽子を右に持っていきたいですが、上の通路には邪魔なブロックがあり、下の通路は狭くて帽子を通せません。
ここで気になるのはやはり、1 マス四方ではない 縦長のブロックを帽子に入れる と何が起こるかでしょう。色々動かしてみると以下がわかって、上の通路で帽子とブロックを入れ替えることができます。
- 帽子を使って、縦長ブロックの下半分を食べることができる。
- 下半分を食べた状態で帽子やブロックを横に押すと、連動して一緒に横に動く。
- 下半分を食べた帽子のつばを押し下げると、食べていたブロックを「吐き出す」。
これまで帽子に入れてきたブロックはどれも小さかったため、一度入れたブロックを外に取り出すことはできませんでしたが、大きいブロックだとその一部を出し入れするといった操作が可能になるわけですね。
4-2
ゴールとターゲットの見た目をお手玉してるように見える配置にしてみましたが、冷静に考えるとマジシャンはお手玉しませんね
さて、3 × 3 のブロックを右上から左下に運びたいですが、そのままでは間の狭い部分を通過できません。 そこで、ブロックに切れ込みがあることを利用して、左のつばを折った帽子でブロックの右の棒を食べれば、ブロックの右下部を一時的に消すことができます。こうしてブロックを左下に運べたら、右のつばも折って帽子を真ん中の棒に移し替えましょう。
4-3
これまたどうみても動かせないブロックがありますが、帽子の力でなんとかします。 右のつばを折って左のつばを押し上げれば L 字ブロックを食べられますが、その後帽子から L 字ブロックを出すにあたって左のつばが邪魔になります。 この矛盾にも見える状況を打破するのが 2 マスブロックで、これを帽子に押し付ければ左のつばを折ることができます。
4-4
帽子を使って縦棒を運ぶテクニックを学ぶステージです。かなり広々として見えますが、縦 3 マスのブロックにとってはそうでもありません。 それなりに解答も長くなるので、順を追って説明します。
まず、棒を左から真ん中に持ってきます。途中の通路が高さ 2 マスしかありませんが、帽子に棒の下 2 マスを収納すれば通すことができます。
次に、棒をさらに真ん中から右に持っていくわけですが、帽子を押し上げると棒を完全に飲み込んでしまうので、いったん帽子を押し下げて棒を取り出し、その棒を直接押し上げるという手順が要求されます。 なお、実際に動かしてみるとわかりますが、この過程でかならず左右どちらかのつばが折れてしまいます。
いったん棒が押し上げられれば、再び帽子収納術を用いることで、棒を右まで運び込めます。 しかし、この段階では棒が上の壁に張り付いているので、あと 1 マス押し下げなければいけません。 帽子の両方のつばが残っていれば話は早かったのですが、そうではないのでもう一工夫要ります。 3-4 でやったように、もう 1 本の棒で帽子の内部を埋め尽くし、右のつばを棒に引っ掛けて本体ごと押し下げればよいです。
4-5
このセクションの最後は、見た目が面白いこのステージです。 帽子をフル活用して、大きなブロックを右側に運んでいきましょう。
このステージがやらせたいことは明白で、まずコの字のブロックの右の棒を通過させ、次に左の棒も通過させる、というだけです。 そして、つばを失うことなく右側の棒を通過させることまでは簡単です。 その後左の棒を通すのが大変で、大まかには以下のような流れで実現できます。
- ブロックの下側を通して、帽子をいちばん左まで運ぶ。途中、左のつばは折らざるを得ない。
- 左の部屋、コの字の外側から帽子・ブロックの位置を調整する(帽子は中央の突起から 2 マス間をあけた位置、ブロックの左の棒はそれより右側)。
- ブロックの上側を通過して右の部屋に戻り、そこからコの字の内側に入り込む。
- コの字の内側から左の棒の位置を調整し、帽子の右のつばを押し上げて食べる。
section 5
幅 1 マスでさえあれば、魔法の帽子は なんだって 食べられます。なんてったって魔法の帽子ですからね
ということで、「帽子に物を入れる」というアイデアが出た当初からずっとやりたかった、ステージの壁を帽子に入れる 問題群です。
5-1
やっぱり、一見して明らかに不可能に思える問題ってこう、いいですよね。
高さ 1 マスの通路に 2 × 2 のブロックを通せと言っているように見えますが、そんな幅の大きいブロックは帽子に入りません。よってこのレベルは logically impossible であることが証明できました *2
このステージには、いままで絶対に置かないようにしていた、下向きに突き出た幅 1 マスの壁があります。帽子を使ってこの壁を食べてしまえば、通路の高さは 2 マスに広がり、ブロックを通せるようになります。 なお、帽子を壁に持っていく途中でブロックが天井にくっついてしまいますが、壁を食べている帽子の左のつばを使って押し下げることができます。
余談として、ブロックが高さ 2 × 幅 1 であったとしても、高さ 1 マスの通路を通すことは不可能ですね。ブロックが帽子の中に完全に落ちてしまったら、取り出す術はないためです。 よって、この問題はブロックを 2 × 1 のものに置き換えても成立します(というか、昔のバージョンの 5-1 は実際そうなっていました)。 でもそうすると、取りうる行動の選択肢が増えてしまい、壁を食べることに気づかせるチュートリアルとしては不親切になってしまうので、あえて大きい 2 × 2 のブロックを配置しています。
5-2
下のターゲットに帽子、左のターゲットにブロックを置くべきなことはすぐにわかりますね。
ブロックを運ぶのに邪魔な 1 マス壁がありますが、5-1 を通ってきたパズルプレイヤーならやることはひとつ、帽子で食べてしまいましょう。 しかしそうすると、帽子内部の一番上に壁が配置されている 状態になるので、この帽子にはもう入ることができず、ゴールは達成できません。
そんな風にして壁を飲み込んだ帽子の挙動がわかったところで、この問題では壁を食べることなく、ブロックを壁の上側を通過して右に運ぶことができます。2 ステージ目にして「実は壁を食べない」が解法なのはあんまりよくない気がしますが……
5-3
帽子とブロックをそれぞれ縦穴に落とし込むステージです。 でも幅 1 マスの穴に帽子を落とすにはつばを両方折らないといけなくて、そうすると帽子を下に押せない…… わけではないですね。今度こそ壁を食べて、壁が入った箱には入れず、代わりに押してしまう ことを利用します。
今回は、食べられる壁が左右 2 か所にあります。上のブロックを取り出すためには左の壁を食べたくなりますが、そうしてしまうと帽子の左右両方のつばを折ったタイミングで部屋の左右どちらかの壁に帽子が張り付いてしまい、ターゲットまで持っていくことができません。 よって、右の壁を食べるのが正解です。例の頻出テクニックを使えばブロックを押し下げることができるので、その後右のつばを折ってから右の壁を食べ、左の 2 マス壁で左のつばを折れば解けます。
5-4
セクション 5 の最後もまた引っ掛け的な問題です。このセクション、なんか全体的に意地が悪くないか?
最終形としては右のターゲットに帽子、左のターゲットにブロックを置きたいですが、素直にブロックを置くとゴールへの道が分断されてしまいます。では邪魔な 1 マス壁を食べてしまえばよいかというとそうでもなく、帽子に入れなくなるのでやはりゴールできません。 唯一の解答は、ゴールすぐ左の 1 マス幅の壁を食べて、2 つのブロックで 2 個のターゲットを埋めることです。
ここまでで全 7 セクション中 5 セクション、ステージ数としては 42 問中 22 問の解説が終わりました。
はい、残りステージ数からもわかるように、終盤 2 セクションがこのゲームの本番、いちばん楽しいパートです。 というか、そういった楽しいパートに早くたどり着けるようにするために、前半のセクションは意図的に問題数を絞っています。
それでは後半戦、次の記事に続きます。